バックグラウンドシステム幼友だち

日記death.それ以上でもそれ以下でもない.

ヤサシサ×ト×ヤマシサ

SFってやっぱり面白い!

本審査だのなんだのでわちゃわちゃしていたため,2週間ぶりとなる読書の記録.

今までずっとゲームブックばっかり取り上げていたため,どうせ今回もゲームブックだろうと思っている方々,甘い,甘いぞ!!

今回読んだのは1981年初版(大本は1978年)の超骨太SF作品

 

ガニメデの優しい巨人である.

ここ最近,ガッツリした本を読んでなかったので最初は量多いな...と思っていたが読み進めたら本当に面白かった.以降,拙文ながら本作の良さを語っていきたい.

本作の良さ,それはド派手なストーリーと高度に完成された世界観,綿密に練られたミステリーに読み手を飽きさせない物語の緩急である.

 

本作の大まかなストーリーは,地球人の宇宙の調査基地に突如異星人の船が飛来,異星間コミュニケーションが始まる...といったものである.わかりやすく言えば初代マクロス.ただ,マクロスと違うのは当の異星人(ガニメアン)が非常に友好的(というか闘争という概念を持たない)ことである.

異星人とのコミュニケーションなんてとてもワクワクさせられる展開だが,本作の良さはそれにとどまらない.何故,異星人がやってきたのか,何故彼らが闘争心を持たないのか,その他様々な設定の全てに納得のいく理由がある.

 

私が非常に大きな衝撃を受けたゲームに,フリーゲームの"Merry X'mas you, for your closed world, and you..."がある.このゲームは非常に人を選ぶため,決して万人に進められるゲームではないが,その中にとても感銘を受けた一文がある.それは「フィクションは常にフィクションであることに抗っている。抗わねばならない」というものである.このゲーム自体はメタメタフィクションであるが.

フィクション作品においてちぐはぐな記述や明らかに不自然な部分があるとリアリティが損なわれ没入感も大きく減少する.ましてや作中で「所詮このお話はフィクションだから」とか言い出したら興ざめだ.そんなもの,物語ではなく筆者の妄想ノートである.もちろん,あえて第4の壁を超えるようなメタな表現に挑戦している作品もある.しかし,それすらもメタフィクションという土俵の上で,危うげなバランスの中で成り立っているものが大半である.

この名言は今でも私のフィクション作品観に影響を与え続けているのだが,本作はそういった少々厭らしい目線で見ても決してご都合主義なところも破綻しているところもない.まるで筆者が本当にこの一連のお話を経験して書いているかのような作品内におけるリアルさがあるのだ.これは物語の根幹に関わる部分だけでなく,間間で挟まれる地球の人たちの反応や各国のゴタゴタなど,実際に地球に異星人が来たらこうなるだろうなあ,という納得を確かに抱かせるような日常の描写にまで及んでいる.

次に,丁度いいタイミングでわんこそばの如く繰り出されるミステリーの数々である.冒頭からシャワーのごとく謎が押し寄せると読み手としても疲れ果ててしまうが,本作は,本当に絶妙な間隔で新たな謎が提示されるのである.ガニメアンはどうなったのか,なぜミネルヴァの原生生物は絶滅したのか,等結構大きめの謎が次々に浮上する.しかも話が無駄に引っ張られることもなく,これらの謎は結構あっさり答えが提示してもらえる.なぜならガニメアンは優しいからである.そしてガニメアンとの交流は進んでいく.ともかく謎と答えのキャッチボールが小気味よく,その中で描かれるガニメアンとの交流も大変に生き生きと描かれている.

 

お話が後半に差し掛かると,ガニメアンたちは地球に来訪する.お話が進むと舞台が地球に移るのはテラフォーマーズにも受け継がれている伝統である(かは知らない).

テラフォーマーズは地球編以降,人類同士の内ゲバに終始しているが本作は舞台が地球に移ってもなお,あったけぇ交流の日々と謎々の応酬が続く.もっとも,ここからは怒涛の勢いで伏線や細かな疑問が回収されていく.決してダレるということはない.

 

ちなみにここまでノンストップで読み進めていくと,読者の方も勘が磨かれてきて,ははあ,さてはこういうことだな?っと大体答えが先読みできるようになってくる.私は,最後ガニメアンが地球を去らなければならなくなった理由を瞬時に予測できて一人悦に浸っていた.

さて,本作の最後は少々ビターな感じで終わる...のだが,エピローグにて非常に優しい結末になることが示唆されている.これにはハッピーエンド厨もにっこり.

 

一日あたり400文字程度という本ブログの基準を大幅に超えてしまったが,それもひとえに本作が大変面白かったからである.

今更こんなカビの生えたSFなんて...って思っている方々にもぜひ読んでほしい.古くから愛され続けるものには愛され続けるだけの理由が有るのである.